私という余韻/見崎 光
 
目覚めの弱い朝
濃いめのブラックコーヒーと
アーモンドチョコレート
苦みで潤される喉をなぞるカカオの甘さ
寝ぼけた体が整えられていく

今日はどうやら天気が良さそうだ

もうすっかり冷たくなった風
煙草のメンソールが
やけに染みてくる
ひと吐きするごとに
紅葉しそうな草木を眺めながら
“今日”という響きを体感する


重そうに運ぶ足取りで居間へ向かうと
まだ小さい甥っ子が
いっちょまえに座って
テレビを見ていた
昔の記憶なんてものは薄くなってしまったけれど
食い入るその目につられて
朝から教育テレビを鑑賞
懐かしさで綻んだのか
可愛くて綻んだのか

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