黎明/sign/月乃助
 
ゆく
ホテルのシャンデリアのもれ出る明かりをふみしめ
焼きあがったパンを抱き
その香りに ひととき街の臭いを忘れている


四つ角を曲がったその足音が、
いつまでも どこまでも 続く
今日が、またここでくり返されることに、
何も感ずることを許されずに


海岸の小蟹をついばみ
裏通りのダムスターを漁る
媚を売る鳴き声に
公園の老婦の投げるえさをありがたがる 今日がくる
空のはるかな自由に どこへも行くことのできない翼を広げる




LetitgoLetitgoLetitgoLetitgoLetitgo
Away




知らぬ間
海峡に生まれた
すべてを浸蝕する霧がやってきた


霞むように
議事堂の上に立つ銅像の
金色の腕を
朝陽が その刃(やいば)で
罰っするように 斬りつけた








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