黎明/sign/月乃助
臨海線を越えれば
また一つ忘却の朝が 時計仕掛けのようにやってくる
未だ
ためらいのない無残なライトの明かりを車たちは放ち、
散水車の水のはねる音に
まどろみを破られた
わたしは、一羽の海鳥だった
それは、
古城のようなホテルの風見鶏にも似た
片足だけで器用に立っている
瀟洒な建物の飾り物
眼下の
林立するマストの向こうの海は、
暗さを増したまま 眠っているはず
潮風の中
冷静さを装った疑いを知らぬ朝陽が隠れている
出番を待つ役者のように
赤い縁取りをした鳥の瞳に
囚われた女が急ぐ
ベルモントの通りを足早にゆく
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