埋め込まれるもの/番田
わされた。そこに飾られていた絵は言葉を見ている時のイメージのように、私の頭の中で右に左にスライドさせられていた。絵は素朴な陶器のようなもので出来ていて、支持体として強靭なアルミが背景に使われていた。私は今日もぼんやりとこの絵の写真の載せられている葉書を見ていたのだが、これはぼんやり見ているとなんとなく背景に描かれている文字のようなものたちが、人に錯覚されているものなのではないかと思わされたけれど、色々なものに見えていた。しかし多分これは錯覚ではないことは間違いはなかった。美術館にあるような絵は完全にイメージが顔料によって定着されているので、そうであるがゆえに権威ある美術館などに掲げられているのだけれど、彼のこれはなかなか鑑賞者のイメージを引き出す面白い作品だと思った。私は今もその絵のことを考えていた。今もその葉書が私の持っている手元にあるのだが、絵の中にはハシゴのようなものも脇に描かれていて、背景にはさきほどのイメージを呼び起こす文字のようなものが擦れるようにして、だがしっかりと定着されているのである。
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