原風景9/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
楽しげに話し込んでいる学生のような客もいて、ゾーンが白線で区切られただけの、鉄製の細長い灰皿が置かれた喫煙所でもやに包まれている人もいた。
見たとたんタバコが吸いたくなり、自然と足がもやの発生場所へと向かった。歩きながらタバコとライターを探すためにあちこちポケットをまさぐって取り出すと左手に二つをまとめて持ち、到着と同時に火をつけた。
昨日の会社帰りの煙には怒りを持っていってもらったが、今日は天に希望を伝えてもらうために煙を昇らせた。
朝の澄んだ空気も一緒に味わおうと、少しだけ鼻で息を吸いながら深く煙を吸い込むと、朝の電話の用事などで緊張していた顔の筋肉が少しずつ緩んでいくのがわかった
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