「檻の中の同性愛」/桐ヶ谷忍
 
で育ってきた私には、
あの頃、彼女という存在がどれだけ、どれだけ大切だったか。
作り物ではない笑顔で接する事が出来る存在がこの世に唯一人でも居る
という事が、あんなにも泣きたいほどにありがたい事だなんて、彼女に
出会う前まで知らなかった。
排斥され続けてきた私なんかを「好き」だと言ってもらえるたびに
哀しいほどに切なくなった。
たとえ期間限定の恋愛関係だと分かっていても。いずれ女子校という檻を出て
男と触れ合うようになれば、高校の三年間は気の迷いだったと否定されたとしても。
あの頃の救いは彼女、唯一人だった。

そして、あらかじめ私が分かっていた通り、高校を卒業して、彼女の
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