名探偵A/番田 
 
血まみれになったものが部屋の隅に、黒く転がっていた。これは他殺による死体なのだが、案の定、私がここに呼ばれている以上は誰が殺したのかはわからないものだった。殺人事件である。彼の家族たちはかわいそうに、その哀れな姿を見て恐れおののき、今は警察からの尋問に疲れて、近くのホテルに身を隠すようにして住んでいる。


そしてしばらく、それを見ていた私はふと床に目を落とした。一体、これは何なのだろうと思う。そこには、赤い、死体についていた血とは別に、青いインクが絨毯の上に散らばっていた。妙に人の形をしているものもあるし、何か、文字のような形をしているものもそこにはある。私はその形を写真に納めて、手帳にそ
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