肉を買いに雨を、出た/番田
はしぶしぶ適当に置いてあった、普通の値段の豚肉をカゴにいれ、レジに歩いた。クレジットカードで清算をすませ、それらをビニールにつっこんで、エスカレーターではなく、目の前に見えた階段をのしのしと上がると、外に出る。外のパチンコ店の光が眼光を刺激し、私は目を少し閉じた。
そして私はうっすらと目を開けてみた。すると通りは雨脚が強まっていて、帰るのがおっくうになった。私はカラオケボックスで一時間ほど雨宿りでもしようかとほくそえんでみた。私にはまだ、聴いたことはあるけれど歌ったことの無い、歌いたいレパートリーが少しだけあったのだ。私はカラオケ館のある方向に、すっと足を向けようとした。すると目の前を通り過ぎる人たちがぼんやりと傘をさしている。おじさんも、公園の中を行く子供たちも、そうだった。ふっと、そこで私はなんとなく苦い笑いを浮かべて、ビリヤード場のある方角に、ぐっと足を向けた。
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