あぐら/錯春
 
久々に実家に帰省したのだった
父は朝と晩にサプリメントを大量に噛んでいた
母は髪が抜けて
いよいよレディースアートネイチャーが必要なのかもしれなかった

「おめ、売れでんのか」

父が言った

「おめ、今もまだ文章書いでるらすーが、そんで稼げっか」

父が言った

「おめ、どげに色んな賞に応募しで、ためぇに紙面さ名前載っだりすでても、受賞すてプロさなんなぎゃ意味ねんじゃねっきゃ」

父が言った



自分は一人っ子で
周りを本に囲まれて育った
三歳の頃には大抵の本や漫画を読み
小学生で乱歩と外国文学を読み
作文で表彰され新聞に載ったりもした
だが

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