殺される/森の猫
 
は、多忙な営業マンだ。時間など関係ない。
深夜でも、海外相手に職場で待機している部下もいるのだ。

あたしの予知に促されあたしたちは、狭いロフトにあがった。
物いれに隠れようとしたとき、ロフトの小さな窓に、サバイバル
ナイフを手にした町内会のおじさんが見えた。
「そこにいるんだろう。この淫乱女め!お前のような奴は、俺の手で
殺してやる。俺の妻の身代わりだ。お前はあいつのような淫乱女だ!」

あたしには、妻の情事を目撃してしまった男の映像が見えた。
あぁ。殺される!あたしたち!

あたしは彼の前に立ち、出刃包丁を手にしていた。敵うはずもない
無理な抵抗と思えた。だが、あたしの殺気は男のそれを上回っていた。
どこから、こんな力がでるのだろうとおもう間もなく。男を組み
伏せ、気が付くとその胸には突き刺さった出刃包丁が目に映った。

殺った。殺ってしまった。
正当防衛だ。
彼に抱きつく。わなわなと身体が震えている。

どこから、通報されたのか。深夜の庭にはパトカーの音が
近づいていた。
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