銀のナイフ/こめ
 
未来から届いた手紙には

これ以上ないくらいの幸せが

書かれていた

けれど僕はそれは信じなかった

いや信じられなかった

こんなにも幸せに僕がなるはずがないと

手紙をバラバラにひき千切って

風に乗せて未来へと返した

一人分の日溜まりを争う人を見つめ

僕は月溜まりの下でうつ向いて

蟻の巣を足で壊していた

こんなにも切なく悲しく苦しくなるなら

いっそ会わなければよかったよ

そうすればこんな気持に押し潰されることはないのに

なぜ知り合ったなぜ恋に堕ちた

あの時あの場所あの時間

それは神の悪戯だったのか

なら僕は貴方を決して許さない

いつか貴方の心臓を銀のナイフで突き刺すだろう

探してもいない

いつも笑って向かい側に座っていた貴方がもういない

だから今日も探しにいく

喧騒に溢れる街に貴方の面影だけを頼りに

薄暗く気味の悪い裏路地を

野良犬と共にはいかいした


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