疾走せよ!鱶/天野茂典
 
 


  桜の花びらが痛い
  速度で
  桜吹雪のなかを私は走った
  青い湖を抜け
  アスファルトの細道を
  オフロードバイク
  のアクセル吹かし
  (鱶ではないが
  私は空気に噛みついた
  四月は残酷な季節だ
  とT・S・エリオットは戦後
  『荒地』で書いたが
  桜の花びらも残酷なのだ
  山の斜面は新緑に染まり
  私の魂までも萌えていた
  桜の花びらは痛い
  びしっと撃つのだ
  撃たれるのだ
  私は拳銃でヘルメットの下の
  顔面を 焼かれるのだ
  記憶にはなかったことも
  起こりうる
  ひとつの記憶が塗
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