ゆるい思い出/Akari Chika
 
ゆるい水枠に
日常が
切り取られていく

何もかも
光をよそに
不確かさを帯びて
透けている

取り壊されてしまうと
そこに
どんな家があったか
わからなくなってしまうように

去ってしまうと
あなたが
どんな人だったか
上手く説明できなくて

巣の中で
羽根にくるまれて
休まる鳥は
ひそやかに
寝息を立てている

それは
今朝のような
冷たい朝だった

「出ていく」と
言った人が
出て行ったきり
帰らなかった

「子供だ」と
言われて
「そう言うほうが子供だ」
なんて
夢の中でも強がった

林檎の
皮を
ていねい
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