分厚い波/
松本 涼
不器用な視線で
私の背中をなぞる人
その深海の底までひとすじに
繋がる台詞が浮かぶなら今
けれど
ただのひとつの言葉を
手繰るよりもずっと早く
分厚い波が途切れず鈍く
激しい重力で私の身体を
逃さず運んでいく
せめてもと足を捨て
そこを尾に変えてもまだ
私は上手く泳げない
波間に顔を上げ
途方に暮れる私を尻目に
夕暮れは重たく熱く
汗ばむ空の彼方へ
今ひと時は
と沈んでいく
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