ローカル/Akari Chika
私の
白い爪の先を
撫でる
あなたの大きな
親指
電車の隅に座って
人目を避けて
生きてきたのに
手鏡を見つめる
自分の顔と
その向こうに流れる
車窓の景色
懐かしいような悲しいような
田園は
瞳に
思い出を残していく
ありがとう ありがとう
ポツリ ポツリと 呟いた
左手は朝の温もりに消えていく
右手は深緑を掴んで
心だけ あなたの中で揺れている
浅はかに
無邪気に
重ね寄せる不安も忘れた
肯定は
恥ずかしい
そんな考えを
前の駅に
置いていく
私の
素朴なまぶたを
撫でる
あなたの大きな
親指
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)