密林からの/月乃助
 
人の声がしていた
気のせいかもしれない
聞かなければ、
聞かずにすむのかもしれない

鬱蒼とした密林の獣道らしかった
薄日の差し込むそこは、鳥が時折 過ぎていく
朝ならばもう、あたしは学校へ行く時間だった
自分に課せられた約束をやぶっては、生きていけない
そう思いながら
一人多湿の森の中を
汗をかきながら歩いていた

誰も足を踏み入れたことのないそこに
人を導く道があるのがおかしくて
否定しようとしてもそれができずに、
受け入れるしかないようだった

叫びたい衝動があるのに、
そうしたら すべてが消え去ってしまうのが恐くて
ただ生茂る影の木々を見つめて黙って
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