ゆうやけ/天野茂典
なぜこだわるのだろう
バスのなかからみるきょうのゆうやけ
いつまでぼくは短歌的抒情にこだわるのだろう
ゆうやけているぼくの人生
あの色はなんという色だろう
記憶がある
生まれる前のはるかかなたの水色なのか
ぼくのからだの細胞を脈うち流れる血の色だからか
ぼくはひとりの異邦人
色彩の前では羊にもなれない
狂うほどの郷愁なのだ
呼んでいるのは父
トランペットを吹きながら
あの海のかなたから
ぼくをはげしく呼んでいるのだ
肝硬変で雪の日にバケツにいっぱい血を吐いた父
舗装道路の側溝にそん
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