焼島 /楽恵
真夜中に揺り起こされた
見知らぬ男が側にいた
男は声を潜めて、島を焼く、と短く言った
これから島を焼くのだという
どこへでも好きなところへ逃げろ、そう呟いて男はどこかに去った
中年くらいの、男の顔はよく見えなかった
窓の外が異様に明るい
すぐさま飛び起きて家の外に出る
隣の集落が炎を上げ燃え盛っていた
辺りいちめん焦げ臭い匂いに満ちて
こちらの集落まで火の粉が飛んできていた
小さな島である
火はすぐに島中を飲み込むだろう
近くで何かが爆発した
本気で島を焼くつもりなのだ
あの男がやったのだ、と悟る
赤ん坊の泣き声、皆何か叫びながら
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