sunset girl/有村
海に沈んでいた。深くて、暗くてただただまっすぐに、とうめいな海だった。彼女はいく年も海の中で生活をしていた。貝殻と人魚のシズクでできたふしぎな家に住み着いて、自分のすきなものだけを集めて暮らしていた。おなかがすくと漁にもでた。ランチの為の漁だ、春には海のふかいふかい、何もかもが透明で透き通った底のほうまで行って、透明のスープをつくったりもした。ときどき寂しくなって泣いても、彼女はけして海を離れようとしなかった。浅瀬でサーフボードを乗りこなす、日焼けが素敵な男の子に恋したり、船乗りの、笑顔がかっこいい男の子とキスもしたけど、誰も彼女を陸に連れてくることは出来なかった。彼女はいつも半身海の中、彼とのデートも海でしかしなかった。彼女は海が好きなのだ。でも彼はそうじゃない、彼女の恋には必ず終わりがあった。さよならをするとき、彼女はたくさん泣く、長い間、海の中で、静かに泣くのだ。誰も知らない、海の深い、深くて澄んだ、彼女の海で。
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