夜があけたら/天野茂典
 
 

  悲しいかいと尋ねたら
  悲しくなんかないと答える
  なぎさではイソシギが波打ち際を歩いている
  ペルーの鳥だ
  ぼくが見た映画のなかで一番なのは
  シベールの日曜日
  村上龍もあげていたっけ
  悲しいかい
  悲しくなんてないや
  旭がのぼればだれだって悲しみを忘れることが
  できる
  死に至る病い*という道を生きている人間だから
  魂が傷つくのはあたりまえのこと
  ああ 季節よ
  城よ
  無傷な心がどこにあろう*
  とうたった詩人も20歳で詩を書くのをやめてしまった
  なるべく詩にならないことばをと考えながら
  
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