でんしゃのなかにふる雨は声かもしれない恋かもしれない/石川敬大
 
( 閉域ではありえない空間なのです )
( ほらまた、雲のように出入りしています )

ぼくはそれをみていて
窓の外から
椅子に坐る甲虫の姿をみていて
( それでいてなにもおもわないのです )

    *

でんしゃのなかで
ふいに落ちてくるのは雨ではなくて
ふいに落ちてくるのは声あるいは恋

ねむりを誘う地声あるいは血声字声時声辞声児声似声自声
それとも
ねむりを覚ます
天の声か
天使の声か





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