絵本「猫たちの肖像画」/まどろむ海月
 
、この誉れ高い仕事を喜
びいさんで引受けましたが、仕事は思ったよりはるかに困難でした。




 彼の持つ技術の粋を尽くして、「世界一幸福な二人」を題としてあら
ゆる絵が試みられましたが、どんなに描いても、この画家の自尊心を満
足させるような作品は、遂にできませんでした。
 「世界一幸福な絵」は、一年経っても二年経っても、日の目を見るこ
とはありませんでした。
 責任感強い画家は精神的衰弱を訴え、宮廷画家の名誉ある地位を自ら
辞することになりました。
 彼の不幸な絶望は、彼のあらゆる自信を奪い、遂には彼から絵を描く
気分そのもの奪う
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