弱/薬堂氷太
たのかは 知らないが
身体から離れた 手足を抱え
丁寧に縫いつけてくれた
そして駆け足で僕の前へ
何かを期待する目で 僕を見ている
だから
乱雑だけど 温かいような縫い目は
すぐ 解けそうだったけど
僕は 一生懸命 夕日を背に
這いずりまわったんだ
君ははしゃぎながら
手拍子で 僕を導く
時々、時計を気にしながら
乱雑な縫い目は 解けて行き
1つ、1つ
僕の後ろに 手足が置き去りにされていくけれど
それでも 僕は
縋るように 地を這う
やがて手足は 全部無くなって
君は半ベソかきながら
晩御飯の匂いにつられて どこかへ行ってしまった
うつ伏せで 顔だけ前を向いている 僕
夕日を背に細長くのびる 影の先に朧月
そして 僕は
やっとギリギリのところまで来たんだ
結局そこには 何も無く
ただ 鼻を突くような晩御飯の匂いがするだけだけど
ゼリーのような脳みそが溶けていく感覚を
感じながら 僕は 何を思うのだろう
そうだね
最後に あの子にもう一度会いたいな
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