ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 

「腕相撲しないか?」と、話しかけたら、
「ウスバカゲロウが腕相撲できるのか?」
「俺がウスバカゲロウに見えるか? どう見ても人間だろ?」「おう」と返され、俺たちは腹ばいになって腕相撲をはじめた。相手はガキだ。なんどやっても俺が勝ち、ガキはついに両手を使いだしたが、それでも無理と気づいたらしく、「両手でやってもあかん……」と情けない声を出したので、
「こいつの兄貴いないのか? いるなら腕相撲しないか?」
 そう呼びかけると、それまで部屋の片隅に、みんなに背を向けた格好で胡坐をかいて頭を垂らしていたデブが立ち上がった。身長180?ぐらいのデブ。少なめに見積もっても、百キロは体重があるだろう。
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