17時27分/錯春
 

厚く垂れ込めた雲の上に
もうひとつ、血色に染まった鮮やかな雲が
たなびいているのを
私は知らない

知らないままに見えないままに
鍵を開けて
ただいま
散らかった部屋
私と家族で散らかした床
綺麗なものも汚いものも
冷蔵庫の中

卵ばかり
冷蔵庫にある
ドアポケットのみならず
野菜室も冷凍室も
無数の様々な姿形サイズの卵が
ドアを開けると雑談をやめる

入れっぱなしで霜が積もった
冷凍室の詩集
中学のときに書いた
ジャポニカ学習帳に綴った詩集
罫線は格好悪いから
わざと自由帳に書いた
レールを探して曲がる文字列
傷まないように
痛まないよ
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