バタフライ・エフェクト/中原 那由多
夜の海へ飛び込んだように
目の前の景色が滲んでいる
零れ落ちてゆく星を見上げれば
私はこんなにも小さい
打ち上げられた空き缶と海藻
錆に絡まる濃い色合いが生々しくて
気づけば思いきり蹴り飛ばしていた
その赤い目は何を見つめているのかと
化学工場に問いただしたところで
返事はいつもと変わらず煙草の脂臭さ
手で振り払うのさえ億劫だから
街の方へと歩こうか
点在する自動販売機の明かりを
街灯に見立てながら
熱帯夜、耳を傾けることが増えていき
夏はついに終わってしまう
何気ないあくびの後に
明日こそ夕立が降ればいいのに、と
相変わらずの静かすぎるスケジュール
糸がプツン、と切れたように
帰り道を失くした
重低音が遠くで聞こえている
ニュースキャスターが淡々と読み上げている原稿には
きっと何も書いてありはしない
青白い光に照らされたコンセントは
サイケデリックへの入り口
耳から全身を伝う振動に揺さぶられて
今、懐かしいゲームを思い出している
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