飛躍/桐谷隼斗
 
し掛かり、
私はその時、まだ十九歳だった。
(がたんがたん)
億劫そうに煤煙を吐きだす化学工場の、
陰茎のような煙突も、
雲にとっては、
彼らを産み出す母なのかもしれない、
(その輪郭の中で)
工場で作られる地球儀。
もしも地球が砂糖の塊だったなら、
部屋を這い回るのは《私》だっただろう。
十九歳とは、意識の森の探検者で、 ある/
二十歳とは、意識の森の責任者で、 ある
これからやって来る、
二十歳のアナウンスに向かってゆっくりと、
私は座席を立った。

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