さくらんぼ/月乃助
夏空からのさそいは、
手にあまる 光りの束
私は私が赤く錆びてしまわないように
少しばかりいばった母親の顔になって
子供達の好きなパンを焼く
summer’s kitchen
女の顔を忘れさせられる 夏の午后
ためらいのない陽光と海の香りの風を集めては、雲のような生地をつくり
子供達の笑い声をふりかけて
焼き上げる夏の思い出
二人の子は、さくらんぼの木の下で
人間の子供のふりをしながら 無邪気に水浴びを楽しんでいる
風が笑い声をあげながら通り過ぎ
太陽までが声をあげ 陽射しをふりそそげば
水にはねた温かな光りが あいさつをしに
窓辺までやってくる
(
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)