聖なる欲望/桐谷隼斗
谷を撫でる風、
きゅー、と声をあげる。
川が熟れ、
女に還っていく、
熱い血流。
空には蒸発した、愛の証。
ふくらむ/われる
話したこと。
罪を吸い取る、
雲について。
背徳の香りを呼び覚ます、
雨について。
私たちを濡らす、
甘い歌声について。
地上で最も美しい/孤独な
単音節について。
果てしない肌の上を滑る、
夜について。
私たちは私たちの上で萌芽する言葉の存在を、
接続を通して、
(極めて聖なる時間帯における)
愛、だと知った。
この清らかな言葉は、
やわらかく光り、
ときに怪しく蠱惑的な律動でもって、
私たちを黙らせる。
谷を撫でる風、
溶けていく、
ああ、溶けていく。
戻っていく、
言葉が産まれる前まで。
今日だけは、
少女の無垢な香りで、
何も語らず、
貴方を絡め取りたい。
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