ウェヌスの値段/亜樹
1時間で1万円。
それが私の値段だ。
更に言えば、それは私の裸体の値段で、『私』自身の価値ではない。外側だけの値段である。
『客』に呼ばれる部屋は、ホテルであったり、自室であったりする。私はそこに赴くと、服を脱ぐ。そうして彼らに言われるとおり手足を折り曲げ、許可が出るまで呼吸を殺す。
私はモデルである。――裸体画専門の。
一時間、裸になって、私は石膏像になる。動かない。汗をかかない。呼吸もしない。
一時間、私は人間ではない。モノだ。無機物だ。
画家は私の外側をスケッチし、色をつけ、好きなように飾る。
私は無垢な少女であり、淫売な毒婦であり、奇声を発する
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