ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
 
く語りかけるの。『早く元気になって、ずんずん泳いでね』って。
 でも、日に日にでめきんの体にはっきりといぼが浮き出て、でめきんも見るからに苦しそうだった。そのいぼこそ悪の象徴O-357その人だったの。不気味に青黒いO-357の姿。少女も母親も恐ろしさに身を震わせていたわ。
 それから数日、なんとか生きていたでめきんも死んじゃって、朝方水槽を覗くと、でめきんの体が水面にぷかぷか浮いていたの。少女は玄関の前に埋めて、供養しやったわ。
『何もしてあげられなくてごめんね』って、泣きながらね。
そのうわさを風の便りで聞いたO-357の父親はね、自分の死を持って、償わなければならないと悟ったの。辛子の
[次のページ]
戻る   Point(0)