夏の楽譜/まどろむ海月
 







誰が投げたか
空の底に小石が一つ
果てのない青い花の野に
生まれたばかり白の風紋は旅立つ
それは水溜りに揺れる夏の楽譜




硝子のまぶたに透ける午後
昼の月は淡く微笑む
飛ばした紙飛行機に
少年自身が乗っていて
誰も傷つけたくない老人は
緩慢な死に向かってボートを漕いでいる
揺らぐ陽炎の運河を
銀海へ航行する豪華客船
紙吹雪 絡まり乱舞する十色テープ 花火
気をつけて 白鳥座の近くに 巨大な氷山が


炎夏の危ういバランス
遠い微笑みは秋の水に浮かんで
自転車の人は倒れない
走り続けているかぎり


建物の隙間には虹彩の文字盤
少しゆがんだ時を刻むのは
黄昏の灯火に誘われているから


白い虹の海辺から
セピア色の距離へと少女の足跡


星の瞬きがせつない夜
死者たちを悼む竪琴に
銀河をゆったりと泳ぐ白鳥
見送るいるかは
初恋を抱えたまま




















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