みずうみの花/こん
 
 みずうみの底に咲く花
 そのように
 抱かれたい夜もある
 深いあいいろの
 一重の花びら
 湖上の月はどこまでも細く
 微かな光さえも
 さざなみに散らされて藍きに染まる
 花はたゆたいながら
 藻にからめとれれて
 ぷちん と
 水底を離れます
 幾粒もの小さな泡に
 心地よく包まれながら
 ゆっくりゆっくり
 のぼってゆくのです
  (みなもにでれば しあわせが
     あるような き がしている)
 岸にうちあげられたなら
 どろにまみれてしまうともしらず
 すこぶる幸福そうな様子で
 あいいろの花は
 もうすぐ もうすぐと
 どこまでものぼってゆくのです
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