無題です/ワタナベ
 
ノンシュガーなはずのコーヒーがやけに甘い
隣の席の黒い帽子の男が
ぼそぼそとなにかつぶやいている

路地裏から路地裏へ
狭い空がえんえんと追いかけてくる
どうやらこの街からは出られないらしい
アルジャーノン、出口を探して

国境線の小高い丘で
名も無い花に囲まれて
つないだ手をはなさないように
ごらん、新しい地平線

いつもそこで夢はさめる
寝起きのコーヒーがやけに甘い
ノンシュガーなはずなのに

夢のきざはし
いつか国境線も越えるはず
朝起きたら羽が生えていたなんて
うそみたいな本当の話

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