ふぶけ量子力学のさくらたち/天野茂典
 

いくらか冷たい墓標の下の
            海
            さくらがちって
            波間に浮かぶ
            いちめんの花びら
 春でもないのに
 猫がないて
 ふれてみるやわらかな体温
            埋められているのは
            猫ではない
            ぼくの好きな父親なのだ
            異常はないか
     雨にうたれて
     苔がはえたりしてないか
     父が好きだったトランペットの楽譜もいっしょに
     眠っているのだ

           
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