healcaのお客様へ/瑠王
本を読むとは言っても小説や専門書ばかりで、詩集などには手を出したことはなかった。
しかし父がどんな本を愛していたのか、気になったのだ。
そして私もまたこの詩集を愛するようになった。
父はこのシナリオを知っていたのだろうか。
表紙の裏側にはこう書かれていた。
「愛すべき息子へ」
彼は少し身体を伸ばし、今度はテーブルに目をやる。
一枚の紙切れ、こう書かれている。
healcaのお客様へ
朝食をとられるお客様は8時までに食堂にお集まりください。パンではなく、ライスをご希望の方はお気軽にお申し付けくださいませ。
彼はベッドから出ると、その紙切れを栞代わりに本にはさみテーブルの上に置いた。
さて、今日はどんなシナリオが待っているのか。
彼は子急ぎで着替えると食堂へ向かうべく、その部屋を後にした。
しかしながら、彼がその部屋に戻ることはなかった。
そして二度と、その本を開くことも。
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