廃退、わたし/百瀬朝子
切なさに押し倒された心は
バクテリアに分解されて
影もなく
跡形もなく
消滅します
そう、だから
安心して眠るといい
悲鳴は求めています
私はマジックアワーに焦がれ
真っ赤に燃える青空に
夜の気配がにじむしとしとと
こぼれる雫に
さよならを告げます
コンクリートの染みは
きみからあふれこぼれた悲しみです
だから舐めて確かめたい
甘いのか
しょっぱいのか苦いのか
きっとそれは不味いだろう
それでもだから
私は舐めて確かめたい
歯磨きは嫌いです
歯石がこべりついた前歯の裏は
居心地が悪いです
この世に放り出された戸
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