古都を旅した/西天 龍
青春前期に
熱に浮かされたように訪ねた仏たち
結局今まで
その眼差しの中を
彷徨っていただけのようだ
時を経て向き合い
あれから様々なことがあったと
あの時何か得たような気がしたけれど
結局何も分かっていなかったと
語りかけてみる
帰るための長い道のりが
旅だと言っていた詩人がいたけれど
青春前期に居たこの場所に
結局は帰って来た
仏たちは黙して語らないけれど
たおやかに上げた手のひらの上に
旅した道のりが一望できる
それを確かめ
無心に手を合わせて
もう一度この堂を出る
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