分光/within
分光された夏。白くて柔らかな豆腐に、包丁を入れる、賽の目切りに。私は産まれた。母親の腹を裂いて産まれた。味付けは醤油だけ。醤油を垂らすだけ。夜が短くなった。止められない時計に抗おうとやっきになって、焦って指をつめた。
幻にもたれかかる。そして倒れてしまう。蝿が飛ぶ。逆らったり、流されたり、頷いたり、首を横に振ったり、素直になったり、気難しくなったり、人間はね、崖っぷちの一番尖端に立っているんだ。心が軋んだときに生まれた言葉ばかり啜っていて、それはまるで嘔吐のよう。白地を塗りつぶしていった。無心の羽ばたき。もっと細かくみじん切りしていけば、私の気持ちがあなたに届くと思う。
伸びすぎた枝を剪定する。自分に合う季節などない。季節に自分を合わせてゆく。
やってきた夏に 身を焦がす 渋滞
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