うつつと夢の間を縫うバスに乗って/石川敬大
眠らないバスにのった
眠れないぼくは
あの野性化した雲といっしょに
あかるい夏の海辺をどこへむかっていたのだろう
写真でみただけの
マリアナ諸島の鮮やかなブルー/グリーンの繁茂に
錆ついて穴が開いた戦闘帽
朽ちるためだけにある折れた翼と操縦席
疲れはてて浅瀬に横倒しになった小艦艇に出入りする色鮮やかな熱帯魚
慰霊のためのマリア像
どれもが
ひとの属性である悲哀/悲惨
戦闘の消耗性/無意味を象徴している
*
トンネルをぬけて
ひときわ濃い潮のにおいを浴びた上着をぬいで
漁村に舫う船を横目に
いく
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