義務と権利/1486 106
どうしても欲しい本があったから
適当な理由をつけて仕事を切り上げた
書店の前は長蛇の列ができていて
整理券は僕の少し後ろで配り終わった
それを確認すると並んでいた人達は一気に散らばっていった
僕は心の中でガッツポーズを取った
レジで代金を払い店を出ると
僕の少し後ろに並んでいた少年が
書店の前に立ち尽くしていた
おそらく同じ本が目当てだったんだろう
彼は書店から出てくる色々な人に声をかけていた
明日転校する好きな人のために
どうしてもその本が欲しいのだと言う
僕は紙袋を隠しながら
そそくさと店を後にした
誰もが幸せになる権利を持っているのに
どうして世界が満
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)