或る嘘つき女の生涯/木屋 亞万
 
ド、マレーシア、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、ロシア、アルゼンチンといった国へ行った話をしてくれた。彼女は旅行記をつけていて、そのページを捲りながらたくさんの国での思い出を語ってくれた。時には、そのときのお土産や写真なども見せてくれた。僕は彼女の隣に座って、彼女がにこにこ笑いながら昔の話をするのを聞いていた。彼女はとてもいい匂いがした。甘い花の匂い。手足は茎のようにすらりと長くて、肌は白いのだけれどときどき紅潮する。美人は花にたとえられるけれど、まさにその通りだと思った。この歩く花のような伯母と、言葉を話すゴリラのような父が姉弟であると、そう簡単には信じることが
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