失恋に溺れて/チアーヌ
、空気と風の匂いでわかる。わたしは鼻がいいのだ。
平日に休みを取ったある日、わたしは駅前商店街を歩いていた。晩ご飯にナスのカレーを作ろうと、材料を買いに出て来たのだけれど、なんだか面倒になって、外食でもいいかなあと思い始めていた。
来週には再び都心へ引っ越しをすることに決まっていた。ここはいいところだけれど、わたしの仕事には向いていなかった。
私鉄沿線のこの街は、昔ながらの商店街が充実していて、ほとんどすべての買い物がここで間に合った。
大きなスーパーなどはあまり無く、小さな豆腐屋がまだまだ現役で商売をしていた。魚屋や肉屋もあって、店先で揚げているコロッケが、これまたとてもおいしか
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