夏のこと/はるな
汗をたくさんかく夏は、おもい出も汗と流れてしまうのかしら、あまりおもい出はない。
数年まえの夏は、ずーっと絵を描いていた。白い白いカンバス、いくつもの濃さと硬さの鉛筆、やわらかい消しごむ、ビニールのぺかりとしたチューブ、奇妙なかたちの水差し。教室は、いつも無言で、イーゼルと鉛筆のけずりかすで歩きにくかった。あの夏はエアコンが故障していて、とても暑かった。髪の毛をとてもみじかくしていたけど、べたべたして不快だった。ともだちができなくて、ひとりで遠くのバーガーショップまで行って昼ごはんを食べていた。秋には絵をかくのをやめた。絵はそれからほとんどかいていない。
それから、夏には文化祭の準備が
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