あいつが捕まえにくる/涙(ルイ)
 
ぬ顔で 普通のふりして生きていこう
母にも誰にも この思いは伝えはしない
どうせ誰も理解することなんてできないのだから


月日は過ぎて 
気がつけば二十歳の誕生日も
とうに過ぎてしまっていました
私はまだ生きています
兄の暴力に疲れきった母は 離婚調停を起こし
あいつに兄を引き取らせることで問題を解決しようとしたのです


母は住込みの仕事をみつけ
私も東京で仕事をみつけ
必死になって働きました
給料は安かったけれど 
それなりにやりがいもあったし
仕事に没頭している時間は
余計なことを考えなくても済んだから


もう昔のことなんて考えなくてもいい

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