東京タワーで彼女が泣いていた事を僕は知らない/虹村 凌
を嫌っていたが、対処は別段嫌った様子では無かった。
果てた後の綺麗な彼女を抱きしめたまま、僕は何を言っているかわからないテレビを眺めていた。彼女が落ち着きを取り戻すまで、ずっとそうしていた。それは、愛では無いからそうしていたのだろう。
翌朝も、目覚めたての僕は彼女を抱いた。寝ずに退屈していた彼女は、化粧も着替えもばっちり済んでいたが、僕はそれをはぎ取って彼女を抱いた。綺麗だったからだ。綺麗だったから、欲情したのだ。愛が無くたって、勃つものは勃つし、出るもんは出る。僕はありったけの空っぽの愛を彼女に差し向けたのだ。同時に絶頂に達し、しばらくは曖昧な時間を寝転がったまま過ごした。行為の後に、そ
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