東京タワーで彼女が泣いていた事を僕は知らない/虹村 凌
 
事を選択させたのだ。それが正解だったのか、間違いだったのかわからない。もしかしたら、更に彼女を苦しませる結果に導いてしまうかも知れない。希望も絶望も無い、夢の終わった曖昧な世界を生かし続ける事をさせてしまったと言う事実が、僕の意識を少しずつ現実から遠ざけて行った。
 涙しながら彼女は僕の手を握り、僕は指先が濡れる感覚を味わいながら、短い眠りに落ちて行った。

 もうすぐで用済みになる、赤い赤い天空の城で、彼女は短冊に「生きろ!」と書いた。夢が終わったら死ぬ気だった彼女は、強く、強く生きる事を誓った。死んだら僕を悲しませるし、傷つけるし、僕は僕を責めるだろう。そんな事はしたくないから、と、彼女
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