洞窟の夢/吉岡ペペロ
 

シンゴはもう洞窟の夢をいちねん見ていた
貝殻の音はそこにはなかった
だから海ではなくて洞窟だった
よこでする妻の寝顔が、ヨシミのそれのように見えた

きょうも雨だろうな、こんなに朝が青いんだから、

ひんやりとした寝室は青い影だけが湿気の予感をはらんでいた
また胸の内から洞窟がでてきそうでベッドを転げるように落ちて浴室にむかった

浴槽を加熱するボタンを押すとピッと音が鳴った
電気をつけっぱなしにして水道をだしっぱなしにして便器にまたがった
きのう見た夢かきょう見た夢かいちねん見続けている夢かシンゴはまだ考えていた
寝室につづく廊下を見つめていた









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