熱帯/捨て彦
 
に、この辺来た事もなかッたさかいな。おかげでアッチ行ったりコッチ行ッたり、ココの家も、一回通り過ぎてたんちゃうか(笑)………あ、……灰皿ァ、あるか?」
「…………………………………」
「灰皿。ちょッと一服さしてくれや。…………お父ちゃん歩き疲れてんねやわ。」
「……………………………………」
「オイ。灰皿て」
「………………………………………」





男は既に取り出していた一本のタバコを少年めがけて投げつける。
タバコは少年の胸下に当たッて床へ落ちる。
その間も、少年は男を静かに睨み付けたまま動かない。





「ええからはよ灰皿出せや」
「……………
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