フラッシュバック/山中 烏流
 




鉛の先が、机をすべる音
紙が擦り合わさったあとの
一瞬の沈黙

傾けた椅子の角度に
ほんの少し
斜めを気取った世界

眼鏡を掛け直す


誰かの、寝息



***



数十と繰り返した音と
もう何回目かも忘れた、単語の束

ひとの声が騒がしいまちで
わたしは押し黙る
俯いたまつげの振動を
じっと、みつめる


鉛が住んだ、きみの指のことと
静寂を話す声。
黒目のつや消しに走るカーテンが、
わたしに
今日も夢を見させる。



白む空の次に
ひとは目覚めようとする

その意味を
きみや、わたし
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